プッチーニの女性観(概要)

第337回例会(2008年5月21日)

演題:プッチーニの女性観

講師:香原斗志(かはらとし)


 早大教育学部卒。イタリアオペラを中心に批評活動を展開。雑誌や公演プログラムへの執筆多数。音楽サイトclassic 1st等にオペラ関連連載中。著書「イタリアを旅する会話」(三修社)。日本ヴェルディ協会,日本ロッシーニ協会会員。

 プッチーニの生誕150年を記念する講演でした。プッチーニのオペラに登場する女性たちはいずれも,現実の世界にはあり得ないほど,純粋に愛に生き,男性に尽くしています.じつはこれは台本の段階で,プッチーニが徹底的に駄目出しをしたことによるもので,原作とはずいぶん違っていること,しかし音楽が甘美で説得力があるために,聴衆はヒロインに感情移入してしまうことを,香原さんはラ・ボエームやマダム・バタフライを例に挙げて説明されました。そしてプッチーニの実生活では,ドーリア・マンフレディという若い小間使いが,プッチーニの奥さんの嫉妬がひとつの原因となって自殺している こと,彼女がトゥーランドットのリュウのモデルとなっている可能性を示唆されました。これは学問的には証明ができないまでも,とても説得力のある考えのように思われ,今後この歌劇を鑑賞する場合に,ひとつの手がかりになるように思われました。(橋都)