ローマの地下世界ーカタコンベ研究の現在(概要)

第343回例会(2008年11月14日)

演題:ローマの地下世界ーカタコンベ研究の現在

講師:山田 順(やまだ じゅん)西南学院大学


 ローマの街には、古代ローマの建造物がそのまま残っていたり、それらを取り込んだ新しい建造物が数多く残されている。道路は、1,500年前ほど前からほとんど変わっていないし、衛星写真を見ると、古代の競技場や劇場などの痕跡が見て取れる。現在のローマの地面を6~8メートル掘り下げると古代ローマの地面に達して、何らかの遺構が現れる。古代ローマの城壁の外側の地下に、現在分かっているだけでも50箇所以上のカタコンベが残っている。カタコンベはキリスト教徒の墓であるが、ユダヤ教徒のものもある。カタコンベは聖ペテロ(サン・ピエトロ)の時代から、キリスト教がローマ帝国の国教になる頃まで作られたものである。その後は墓は地上に作られるようになったが、迫害時代の聖人が埋葬されていることから、巡礼地として多くの人々が訪れるようになった。ゲルマン人の大移動によって、ローマが脅かされるようになると、聖人の遺骨は城壁内の教会に移されて、カタコンベ自体が忘れられていった。19世紀になって、再びカタコンベが研究されるようになったが、いまだに研究者は少なく、人々の目に触れる機会もほとんどない。カタコンベは盗掘に遭っているものも多いが、さまざまな遺品や壁画が残されている。ことに壁画からは当時のキリスト教やローマの習俗などを知ることができて興味深い。(佐久間)