イタリア現代詩を読み解く3つの鍵(概要)

第349回例会(2009年6月25日)

演題:イタリア現代詩を読み解く3つの鍵

講師:辻昌宏 明治大学教授

会場:南青山会館


 6月25日,イタリア研究会第349回の例会が行われました。演題は「イタリア現代詩を読み解く3つの鍵」,講師はイタリア文学,英文学研究者である明治大学教授の辻昌宏先生です。いささか難しそうな題名に恐れをなしたのか,いつもより聴衆が少なめでしたが,辻先生のお話は非常におもしろく分かりやすく,また示唆に富んでおり,出席された方々は得をした気持ちになったのではないかと思います。イタリア現代詩を読み解く3つの鍵とは1.詩人の居場所,2.定型詩,3.キリスト教的世界観です。世界における自分の居場所の無さ,韻や一行の長さといった詩の形を守っているかどうか,キリスト教的世界観もしくはそれに代わる世界観を持っているかどうか,この3つの点に注目して現代詩を読むと,見えてくるものが沢山あるというのがポイントです。最後にヴァルドゥーガという女性詩人の超絶技巧的しかも肉体感覚に根ざした詩が紹介され,講演は終わりました。講演後には,詩と散文との違いはどこにあるのか,韻を踏まなくなったのは意図的なのか,やむを得ずなのか,ダンヌンツィオの現代における評価などさまざまな質問が続出しました。辻先生は「イタリア現代詩の部屋」というブログで精力的にイタリア現代詩の翻訳を続けておられます.ぜひ覗いてみてください。 (橋都)