「街並みの美学」再考―イタリアにおける近代都市の形成過程をめぐって(概要)

第358回例会

・日時:2010年3月30日(火)19:00-21:00

・講師:柴野 均 信州大学人文学部

・演題:「街並みの美学」再考―イタリアにおける近代都市の形成過程をめぐって

・会場:東京文化会館4階大会議室


 これまでイタリア都市の町並みの美学というと、厳格な規制によって保存されたいわゆるチェントロ(旧市街)の景観だけが問題とされてきました。しかし実際には多くのイタリアの諸都市も鉄道の開通を契機として、19世紀に大規模な都市改造が行われています。柴野先生はその実例をローマ、ミラノのような大都市、アレッツォ、フェッラーラ、ピサのような中小都市を実例として示され、とくに人口集中と不潔さで悪名高かったナポリの都市改造を多くの画像を提示しながら説明されました。そしてイタリアの多くの都市も駅周辺あるいは新市街では、19世紀スタイルの建物が建ち並んで、画像だけではどの都市であるかが分からないほど、画一的な姿になっていることを示されました。たしかに町並みの美学という場合に、保存という観点も重要ですが、人の住んでいる街である以上、ダイナミックな変化を免れることはできず、その観点からの分析が必要であることが良く理解できた講演でした。(橋都)