イタリアにおける中国企業の台頭(概要)

第369回例会報告

・日時:2011年2月15日(火)19:00-21:00

・講師:松本 敦則 法政大学准教授

・演題:イタリアにおける中国系企業の台頭

・場所:東京文化会館4階大会議室

 

 講師は法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究家准教授の松本敦則さんです。松本さんはミラノ領事館の経済担当・専門調査員として,また現職になってからもイタリアの中小企業,地場産業の研究を精力的に続けておられます。その中でも繊維の街として有名なトスカーナ州プラートの街の最近の変容ぶりを、さまざまなデータと写真とで示してくれました。その変容ぶりとは一言でいえば,中国系企業による席捲です。プラートにはもともと中小の繊維関係の企業が多く,約8,000社が登録されているそうですが,そのうちの2,000社近くがすでに中国系で,在住中国人の数も実数の把握が難しいものの,30,000人を超えているのではないかといわれています。その結果,プラートの街の経済は中国人抜きには成り立たない状況になっており,彼らは一部では歓迎され、一部ではひんしゅくを買っているという状況のようです。もっとも大きな問題点は,もともとプラートにはテキスタイル関係の産業が多かったのが,よりもうけの多いアパレル関係の産業へと主力が変わってしまい,質の高い糸や布地をパリやミラノに提供することができなくなってしまったことだということだそうです。こうした問題点は,われわれ日本人にとっても人ごとではなく,巨大な中国パワーに対抗するあるいは協力関係を構築するにはどうすればよいのか,大いに考えさせられる講演でした。講演後の質疑応答でも,そうした関心から多数の質問が寄せられていました。(橋都)