女性にとって数学はどのような意味があるのか?18世紀イタリアの女性と数学(概要)

第370回例会報告

・日時:2011年3月9日(水)19:00-21:00

・講師:三浦 伸夫 神戸大学教授

・演題:女性にとって数学はどのような意味があるのか? -18世紀イタリアの女性と数学

・場所:東京文化会館4階大会議室


 講師は神戸大学国際文化学研究科教授の三浦伸夫先生です。中世数学史がご専門の三浦先生は、18世紀のミラノで生まれ活躍した女性数学者アニェージの生涯をたどりながら,当時のイタリアの女性を取り巻く文化的雰囲気をフランスや英国との比較をしながら描き出し,女性が学問を行うことが決して例外的なものではなかったことを示されました。ボローニャ大学の数学教授になったアニェージだけではなく、同じくボローニャ大学の物理学教授になったラウラ・バッシ、詩人から数学研究に転向したフィーニなど、他にも当時、女性科学者が活躍しており、これには初期カトリック啓蒙主義ともいうべき運動がその支えとなっていたことを、先生は示されました。この時代には、科学が宗教と対立するのではなく、むしろ信仰の一形態としての数学研究という面があり、後半生は数学の研究を放棄して貧者の救済に身を捧げたアニェージの生涯からもその事が分かります。われわれがまったく知らなかった科学史、イタリア史の一側面を鮮やかに示して下さった三浦先生,ありがとうございました。 (橋都)