古代ローマ時代のガラス(概要)

第372回例会

・日時:2011年5月30日(月)19:00-21:00

・講師:藤井 慈子(ふじい やすこ)ローマ在住ガラス研究家

・演題:古代ローマ時代のガラス

・場所:東京文化会館4階大会議室


 昨日,第372回のイタリア研究会例会が行われました。講師はローマ在住のガラス研究家藤井慈子(やすこ)さん,演題名は「古代ローマ時代のガラス」です。もともと古代ローマの文献的な研究をおこなっていた藤井さんは,たまたまバチカン美術館で目にした古代ローマの金箔ガラスに魅せられて,その研究を始めました。そのおしとやかな外観とはそぐわないオタク的エピソードも交えながら,ローマ時代のガラスの歴史,技術,ローマ人の生活に与えた影響など,広範な知識を情熱を込めて語ってくれました。エジプトあるいはパレスチナで発明されたと考えられるガラスが,ローマ時代に吹きガラスという画期的な方法を得たことにより,自由な造形が可能となり,大量生産による値段の低下も相まって,窓ガラスも含めて庶民が用いることのできる素材となりました。そしてそれはイタリア半島から帝国各地に拡がり,ゲルマニアのケルンでひとつの技術的な頂点を形成するまでになったのです.それがさらに朝鮮や日本にまで,その技術が伝わったと考えられ,われわれに人間の営みの壮大さを思い起こさせてくれます。また藤井さんの関心の中心である金箔ガラスが,真っ暗なローマのカタコンベにおいて,肉親の墓を見つけるための目印としても用いられたのではないか,というお話は,世の東西を問わない先祖への思いの深さを伝えるものでした.藤井さん,興味深いお話をありがとうございました。(橋都)