ダンテにおける《4項類推》と《空間転写》(概要)

第374回例会

・日時:2011年7月28日(月)19:00-21:00

・場所:南青山会館2階大会議室

・講師:藤谷 道夫(ふじたに みちお)

・演題:ダンテにおける《4項類推》と《空間転写》


 7月28日(木)にイタリア研究会第374回例会が開かれました。演題名は「ダンテにおける《4項類推》と《空間転写》」,講師は帝京大学准教授で,現在日本で最高のダンテ研究家として知られる藤谷道夫さんです。じつは演題名を見ても,司会者の僕にもどういった内容になるのか,皆目見当がつかなかったのですが,実際にはじつに興味深くまた分かりやすいお話で,まさに目から鱗でした。ダンテは最初のルネッサンス人とも言われていますが,その心情はあきらかに中世人であり,近代の人間とは思考の回路が異なっていること,彼は神が作り給うた世界の秩序を,自分の作品の中に模倣しようとしていたことを,藤谷先生は多くの神曲からの文例を挙げて説明されました。しかもこうした神曲の構造が明らかになってきたのは,何と彼の生誕700年が過ぎた1960年以降で,本格的に研究されるようになったのが1980年代になってからだということです。しかもダンテの用いた技法のほとんどは,翻訳によって消えてしまうために,なかなか日本人には理解しにくいことを,藤谷先生は示してくれました。ダンテの偉大さ,神曲の巨大さをあらためて知ることができた講演であったと思います。いつか藤谷先生による「神曲」の翻訳を読んでみたいものです。藤谷先生,ありがとうございました。(橋都)