イタリアの年金制度(概要)

第381回例会

・日時:2012年3月10日(土)14:50-16:40

・場所:南青山会館2階大会議室

・講師:中益 陽子 都留文科大学

・演題:イタリアの年金制度 


 第381回イタリア研究会例会が開かれました。演題名は「イタリアの公的年金制度:イタリアは年金天国か」で,講師は都留文科大学文学部社会学科講師の中益陽子さんで。どうも日本ではイタリアは年金天国のように考えられています.中益さんのお話では,たしかにある時期,特定の職種においては,受給者にとって有利な年金制度があったことは事実のようです.しかし日本と同じく国の財政状況が厳しいイタリアでは,次々と年金改革が行われており,その基本は受給前の給料を反映させる報酬方式から,拠出した保険料総額を反映させる拠出方式への転換です.これにより,多くの受給者で年金の受給額が減っています.結局はよく言われるように“free lunch というものはない!”ということのようです。さらにイタリアの年金制度は基本的に,国民全体を対象とした制度ではなく,就労者だけを対象とした制度ですので,日本との単純な比較はむつかしいのです.また日本の生活保護に該当するような制度が無く,所得の再分配が効きにくいシステムとなっています.これは,困った時にはお上が何とかしてくれる,と考えがちな日本人に対して,イタリアには国による干渉を嫌う国民性があるということを,中益さんは指摘されました。複雑で分かりにくい内容を,明快にお話しされた中益さんありがとうございました.参加者の年金に対する関心は非常に高く,講演後にはさまざまな質問が続出しました。 (橋都)