イタリアとブタ ~ブタを取り巻く文化と食習慣(ガストロノミア)~(概要)

第382回例会

・日時:2012年4月6日金曜日19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:粉川 妙 イタリア食文化研究家

・演題:イタリアとブタ ~ブタを取り巻く文化と食習慣(ガストロノミア)~ 


 4月6日(金)にイタリア研究会第382回例会が行われました。演題名は「イタリアとブタ:ブタを取り巻く文化と食習慣(ガストロノミア)」でした.講師はウンブリアのスポレート在住のイタリアの食・スローフード研究家でライターの粉川妙さんです。われわれ日本人は西洋料理の代表としてはビフテキを思い浮かべてしまいますが,ヨーロッパでは本来,牛は働かせる動物,乳を搾る動物で,食べる動物の代表は伝統的にブタだったのです。粉川さんはこのヨーロッパのブタ食文化が,エジプト,ギリシャ,ローマから続く伝統であり,ブタは聖性とけがれと両方を持つものと考えられてきたこと,ローマ人はもともと菜食が中心であったのだが,ユダヤ人やケルト人にブタ飼いをさせて,ブタを蛋白源とするようになったことを,多くの図版を使って話をされました。そして中世以降は森でドングリを食べさせてブタを太らせ,冬に殺して加工食品とするという現代に繋がる習慣が確立したこと,ブタ飼いの地位が農民よりも高かったことを示されました。しかしその後に,貴族階級ではジビエがより高級であるという風潮が広まったために,ブタは庶民の食べ物であるという考えが固定化されたのだそうです。さらに「ブタは鳴き声以外はすべて食べられる」ということわざ通りに,ブタのあらゆる部位を使った加工食品,プロシュット,サラミ,ラルドなどの写真,製造現場の様子を示されました。90分の講義の終わりには,空腹感を覚えた方も多かったのではないかと思います。聴衆からは「非常に面白かった」という感想が多く,その後の懇親会でもイタリアのブタ食文化,その他の食文化の話に花が咲きました。粉川さん,ありがとうございました。 (橋都)