ムッソリーニの子どもたち -ファシズム体制下の少国民形成について-(概要)

第386回例会

・日時:2012年8月28日(火)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:藤澤 房俊 東京経済大学教授

・演題:ムッソリーニの子どもたち -ファシズム体制下の少国民形成について-


 イタリア研究会第386回例会が開かれました。講師は東京経済大学教授の藤澤房俊先生、演題は「ムッソリーニの子どもたち―ファシズム体制下の少国民形成について」でした。イタリアではムッソリーニによるファシズム体制のもと、子どもたちをファシズムに導くために、バリッラと呼ばれる子どもたちの養成組織が整備されました。これは学校とは別の課外活動でしたが、学校においても1930年から国定教科書が導入され、その中ではムッソリーニが賛美され、バリッラとその制服がかっこ良いものとして持ち上げられていました。また男らしさ、女らしさ、多産が奨励され、少国民をファシズム体制に組み込むのに大きな役割を果たしました。藤澤先生は、当時実際に使われていた国定教科書の中で、ムッソリーニを賛美し、子どもたちに愛国心を喚起するためにどのような言説が用いられたかを示すとともに、初等教育においても次第に人種主義的な色彩が強くなり、ついには明らかな反ユダヤ主義が示されるようになった経過を明らかにしてくれました。われわれの全く知らない情報が多く、参加者は熱心に聞き入るとともに、講演後には、日本の軍国主義とイタリアのファシズムとの基本的な違いがどこにあったのか、あるいはバリッラとヒットラー・ユーゲントとの影響関係など、鋭い質問が続出しました。これは会員の方々のこの問題についての関心の深さを示していると考えられました。藤澤先生、興味深いお話をありがとうございました。(橋都)