ナポリ銀行歴史文書館史料から浮かび上がる18世紀の音楽家たちの活躍と生活~モーツアルトが憧れたオペラの都の実情(概要)

第387回例会

・日時:2012年9月20日(木)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:山田 高誌 大阪大学大学院文学研究科

・演題:ナポリ銀行歴史文書館史料から浮かび上がる18世紀の音楽家たちの活躍と生活~モーツアルトが憧れたオペラの都の実情


 第387回イタリア研究会例会が開かれました。講師は音楽史の専門家である大阪大学大学院文学研究科芸術学講座助教の山田高誌さん,演題名は「ナポリ銀行歴史文書館資料から浮かび上がる18世紀の音楽家たちの活躍と生活ーモーツァルトが憧れたオペラの都の実情」でした。山田さんはたびたびイタリアに滞在して,ナポリ銀行歴史文書館の資料を分析して,そこから18世紀,19世紀のナポリにおけるオペラの実情を明らかにする研究を続けています.全部で2億5000万冊あるという伝票の山の中から,顧客名簿と業務日誌を頼りに目的の伝票を見つけ出し,それを解読してさまざまな情報を得るという研究は膨大な時間と労力を必要とする仕事ですが,この地道な仕事から多くのことが分かってきています.たとえば,オペラの作曲家と歌手は高額の年俸を得ていたのに対して,器楽奏者は副業をしなければ生きていけない程度の年俸しかなかったこと,あるいはアリアや序曲の作曲家とレチタティーヴォの作曲家とは別人であることがしばしばあり,レチタティーヴォの作曲家は多くの場合,チェンバロ奏者であったことなどです.そしてオペラが次第にシリアスな内容になるにともない,本来の作曲家がレチタティーヴォも作曲するようになってきたと言うことです。山田さんは史料が残っていたのでこうした研究が可能だが,200年後あるいは500年後に,現在の音楽について同じような研究が可能であろうか,との疑問を呈されました。たしかに資料の電子化とそのデュラビリティは大きな問題であり,真剣に考える必要があると思います。山田さん,たいへんレベルが高く,しかも面白いお話をありがとうございました。  (橋都)