生誕200年,ジュゼッペ・ヴェルディの虚像と実像(概要)

第399回例会

・日時:2013年9月26日(木)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:香原 斗志 オペラ評論家

・演題:生誕200年,ジュゼッペ・ヴェルディの虚像と実像


 イタリア研究会第399回例会が開かれました。今年がヴェルディ・イヤーであることを記念した講演で,演題名は「生誕200年,ジュゼッペ・ヴェルディの虚像と実像」,講師はオペラ評論家の香原斗志さんでした。ヴェルディと言えば,それまでのオペラとは違ったダイナミックで力強いオペラを作り出した作曲家で,とくに「ナブッコ」を始めとしたオペラが,当時のイタリア人の愛国心を刺激して,祖国統一の原動力のひとつともなった,というのが定番の解釈だと思います。しかし香原さんは,少なくともナブッコの初演の時には,愛国心の熱狂的な盛り上がりはなかった事,直後に行われたいわば敵国であるオーストリアのウィーンでも好評を博した事を考えると,ヴェルディ・イコール,リソルジメントの作曲家というのは,後に作られた伝説と考えられるとの,最近の研究成果を示されました。またダイナミックなオペラ作家という点に関しても,最近刊行されつつあるヴェルディ全集では,彼がこれまで考えられていたよりも,細かい強弱の指示を付けており,ロッシーニやドニゼッティの伝統を踏まえた装飾的な歌唱法も身につけていた作曲家である事が分かってきたと言う事です.最後に聴いたバロックオペラを得意とするソプラノのSimone Kermes の歌う「イル・トロヴァトーレ」のレオノーラは,まさにわれわれのヴェルディ感を覆すものでした.香原さん,面白いお話をありがとうございました。 (橋都)