あるイタリア人の個人的体験としての日本(概要)

第401回例会

・日時:2013年11月29日(金)19:00-21:00

・場所:南青山会館(表参道)

・講師:Giorgio AMITRANO(イタリア文化会館東京館長)

・演題:あるイタリア人の個人的体験としての日本 


 イタリア研究会第401回の例会が開かれました。講師は日本文学の翻訳者としても活躍しているイタリア文化会館東京館長のジョルジョ・アミトラーノさん,演題名は「あるイタリア人の個人的体験としての日本」です。もともと英語が得意で英文学に興味を持っていたアミトラーノさんが,ナポリ東洋大学に入学した時に,日本語を選択したのは,全くの偶然,気まぐれであったということですが,それには黒澤明の映画が好きであったご両親の影響もあったようです。入学後には日本文学のイタリア語訳を読みふけり,とくに川端康成と中島敦に惹かれたということです。そして卒論のテーマとして中島敦を選び,資料探しを目的に日本に来たことが,彼の転機になりました。初めてでありながら,懐かしさを感じリラックスすることが出来た東京の街と,須賀敦子さんに出会ったことが,アミトラーノさんのその後の人生を決定づけたのです。そしてご自分の最初の日本文学の翻訳として「中島敦・短編集」を出版し,さらに須賀さんに勧められた吉本ばななの「キッチン」を世界で初めて外国語訳をして大成功をおさめました。その後は,村上春樹の小説など多数の現代日本文学の翻訳を行い,多くの翻訳賞を受賞されています。美しく格調高い日本語で語られたアミトラーノさんの個人史は,最後にリズムの美しい宮沢賢治の詩「雨にも負けず」のイタリア語訳の朗読で締めくくられました。アミトラーノさんの素晴らしいお話に,参加者一同が感動し,質問が続出しました。参加者との日本文学談義は,その後の懇親会でもいつまでも続きました。アミトラーノさん,本当にありがとうございました。 (橋都)