ファシズムと「不完全な全体主義」(概要)

406回例会

・日時:2014年4月21日(月)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4F大会議室

・講師:小山 吉亮 神奈川大学

・演題:ファシズムと「不完全な全体主義」

 

 4月21日,イタリア研究会第406回の例会が開かれました。講師は新進気鋭の政治学者,小山吉亮(おやまよしあき)さん,演題名は「ファシズムと『不完全な全体主義』」でした。ムッソリーニによるイタリアのファシズムは,ナチスドイツやスターリンのソ連に較べると,全体としては中途半端であり,その理由を,ムッソリーニ個人の資質やイタリア人の気質に帰する傾向があります。しかし小山さんは,そもそも完全な全体主義が実際に成立することはありえず,それは単なる目標に過ぎないこと,イタリアのファシズムも完全な全体主義を目指していた点では,変わりがないことを示されました。そしてそこには限定的ではあっても,自由な議論を推進しようという考え,一気に変革を行うのではなく,青年を教育することによって,長いタイムスパンでファシズムを定着させようとする考えがあったことを指摘されました。結局,イタリアのファシズムは議会制度の改革に失敗し,国王の権限をコントロールできずに,破滅への道をたどります。しかし誰もムッソリーニが権力を握るとは思っていなかったのに,議会での膠着状態から,どの党派も政権を確立することができず,ファシストの台頭と権力の掌握を許してしまったことは,われわれにも大きな教訓となるように思われます。小山さんのお話は,じつに明快で,またわれわれのこれまでのファシズム概念を覆すような,じつに興味深いものでした.小山さんありがとうございました。 (橋都)