はじめにリブレットあり(概要)

第411回例会

・日時:2014年9月24日(水)19:00-21:00

・場所:南青山会館2F大会議室

・講師:辻 昌宏,明治大学文学部教授

・演題:はじめにリブレットあり


 第411回のイタリア研究会例会が開かれました。講師は明治大学教授でイタリア研究会会員でもある辻昌宏さん,演題名は「はじめにリブレットあり」でした。辻さんはイタリアの詩の研究者でもあり,オペラのリブレット(脚本)のとくにアリアの部分が,詩としての定型や韻律を守っている事から,リブレット,リブレッティスタにも興味を持つようになったという事です。元々はオペラの制作において,作曲家よりも脚本家が主導権を握っていたのが,ヴェルディのキャリア後半あたりから作曲家の力が上回るようになり,とくにプッチーニは作曲に時間をかけ,ときには脚本家が書いた脚本を自分で修正してしまう事もあったようです。そのひとつの理由として,オペラ制作のプロデューサーが劇場支配人から楽譜出版社へと変わり,作曲家に時間的,金銭的余裕ができた事が大きいという事です。辻さんは,プッチーニの「ラ・ボエーム」の第1幕で歌われる有名な2つのアリア「Che gelida manina(冷たい手を)」と「Mi chiamano Mimi(私はミミ)」を例に取り,歌詞で韻を踏んでいる部分をプッチーニがいかに印象的に曲を作っているかを示してくれました。オペラを鑑賞するにあたって,曲だけではなく,リブレットにも関心を持てばさらに面白さが拡がりそうです。辻さん,どうもありがとうございました。(橋都)