フリードリッヒ2世の十字軍(概要)

7月例会(421回)

・日時:2015年7月9日(木)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4F大会議室

・講師:高山博氏(東京大学教授)

・演題:「フリードリッヒ2世の十字軍」

 

イタリア研究会第421回例会が開かれました。講師は東京大学大学院西洋史学科教授の高山博先生、演題名は「フリードリッヒ2世の十字軍」です。
13世紀のシチリア王フェデリーコ2世は、一般的には神聖ローマ皇帝フリードリッヒ2世として知られていますが、パレルモの多文化的な文化圏で育てられたために、当時のキリスト教文明の枠組みには入りきらないような人物でした。彼は十字軍遠征に行くという教皇との約束を守らなかったために破門を受けながらも、それまでの十字軍のような異教徒の殺戮による聖地奪回をよしとはしませんでした。エジプトのスルタン、アル・カミールとの度重なる粘り強い交渉によって、戦いなしに聖地エルサレムの奪回に成功したのです。しかしこれはキリスト教と、イスラム教徒双方から歓迎されず、両教徒の平和共存は10年間しか続かなかったのです。
このいわゆる「無血十字軍」は、われわれに多くのことを教えてくれます。歴史を世界各地の文明の衝突として捉えるだけでは、本当の歴史が見えては来ないこと、歴史を世界全体の人類の動きからグローバル・ヒストリーとして捉えることが、このグローバル化の21世紀において必要であることです。13世紀の一人の君主の行動がわれわれにとっても偉大な教訓となることを、この高山先生の講演は教えてくれました。講演後の質問の中でも、「十字軍国家は国家だったのか?」「それでは国家とは何なのか?」「そもそも十字軍の真の目的とは何だったのか?」など興味深い質問と高山先生の的確な回答により、会場は大いに盛り上がりました。高山先生、ありがとうございました。(橋都)