ベルカントからヴェルディへ−21世紀のヴェルディ歌手たち (概要)

8月例会(422回)

・日時:2015年8月6日(木)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4F大会議室

・講師:加藤浩子氏(音楽評論家)

・演題:ベルカントからヴェルディへ−21世紀のヴェルディ歌手たち

 

第422回イタリア研究会例会が開かれました。講師は音楽評論家の加藤浩子さん、演題名は「ベルカントからヴェルディへ—21世紀のヴェルディ歌手たち」でした。
われわれがイメージするヴェルディ歌手は、声量があり重厚な表現を得意とする歌手たちです。しかしこうした歌手はじつはヴェルディよりも後の時代のヴェリズモ。オペラを得意として、そこからヴェルディを歌うようになった例が多いのです。こうした歌手の活躍により、1970年代までがイタリアオペラとくにヴェルディ。オペラの黄金時代といわれてきました。しかしヴェルディのオペラが初演された時には、ヴェリズモ歌手はもちろんヴェルディ歌手もいなかったわけです。ではどんな歌手が歌ったのかといえば、当時の人気演目であったロッシーニ歌いがヴェルディを歌ったわけです。
しかし最近ヴェルディの上演にも新しい潮流が生まれています。それには1980年以降のロッシーニ。ルネッサンスとオーケストラにおけるピリオド楽器、ピリオド奏法の興隆が大きく影響しています。加藤さんはDVDやCDを駆使して、新しいヴェルディの演奏、歌唱がどのようなものかを示してくれました。とくに注目すべき歌手としてテノールのグレゴリー。クンデとメッゾ。ソプラノのダニエラ。バルチェッローナを挙げられましたが、彼らの歌唱は非常に清新で、われわれのヴェルディのイメージを良い意味で覆すものです。これから新しいヴェルディ。オペラの魅力が現れてくるのかもしれません。ただ、講演後の質問に対する答えでも明らかになったように、残念ながらバリトンに人材が不足しているという事です。
加藤さん、興味あるお話をありがとうございました。(橋都)