日伊交流の暁(1866-1880)(概要)

1月例会(427回)

・日時:2016年1月26日(火)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4F大会議室

・講師:ジュリオ・ベルテッリ氏(大阪大学大学院言語文化研究科言語社会専攻准教授)

・演題:日伊交流の暁(1866-1880)~幕末・明治初期の日本におけるイタリアの立場と役割~

 

 今年2016年は日伊修好150周年の記念の年です。そのため美術展を初めとして、さまざまな行事が企画されています。イタリア研究会でも今年最初の例会のテーマとしてこのテーマを選び、大阪大学准教授(イタリア語専攻)であるジュリオ・アントニオ・ベルテッリさんに「日伊交流の暁(1866−1880)〜幕末・明治初期の日本におけるイタリアの立場と役割〜」と題した講演をお願いしました。
ベルテッリさんはこの時代の日伊交流をテーマに研究を続けて、日本で博士号を取得されています。これまでに知られていなかったとくにイタリア国内に残る私文書を調査することによって、当時の日伊関係をあきらかにできるだけではなく、日本と他の欧米諸国との関係も見直すことができるということです。ご存じの方も多いと思いますが、19世紀半ばにヨーロッパで蚕の伝染病・微粒子病が大流行して、養蚕業が大打撃を受けました。それを受けて、日本に最初にやって来たイタリア人は健康な蚕の卵を求める蚕種商人たちでした。しかし日伊修好通商条約がなかったために、彼らの取引は不利な状況におかれていました。それを改善するために全権大使アルミニョンが来日し、1866年に短期間での条約締結に成功しました。そして初代駐日イタリア公使が情勢を的確に判断して、信任状を将軍ではなく天皇に提出したことによって、明治政府から好感を得ることができ、それがその後の良好な日伊関係の礎となったということです。その後、蚕種外交は衰え、イタリアは美術学校の設立など美術外交に切り替えますが、当時の良好な日伊関係がその後20世紀の日伊関係にも影響したと考えられるということです。
新しい資料に基づくベルテッリさんのお話は、活き活きとして興味深く、聴衆は思わず引き込まれて、講演終了後にも沢山の質問が出ていました。ベルテッリさんありがとうございました。(橋都)