“カテリーナ・デ・メディチがフランス料理をつくった”は本当か (概要)

  2月例会(428回)

・日時:2016年2月29日 (月)19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:中村浩子氏(イタリア語翻訳家・文筆家)

・演題:“カテリーナ・デ・メディチがフランス料理をつくった”は本当か

 

イタリア研究会第428回例会が開かれました。講師はイタリア語翻訳・文筆家である中村浩子さん。演題名は「“カテリーナ・デ・メディチがフランス料理を作った”は本当か?」というもので、これについてイタリア人は、その通りだと言い、フランス人は、いやそんな事はない、と主張して、長年にわたる論争の種となっている命題です。
中村さんはカテリーナを主人公とした小説を執筆中だそうで、そのために収集した資料や当時の料理書から、この命題について考察を進めました。カテリーナはフィレンツェの中心にあるメディチ・リッカルド宮で生まれましたが、幼くして両親が亡くなったために、多感な時期をポッジオ・ア・カイアーノにあるメディチ家別荘で過ごしました。中村さんはこれがカテリーナの味覚や料理の好みの形成に大きな役割を果たしたのではないかと指摘しています。当時のフランスとイタリアの宮廷料理を比較してみると、フランスの方が肉料理が多く、煮込み料理が多く、スパイス類が多く使われていたのが特徴でした。また歴史的に明らかにカテリーナがフランスにもたらしたと考えられる料理や食器類もあり、その中には鴨のロースト・オレンジ風味、オニオングラタンスープ、ベシャメルソース、ホイップクリーム、シャーベット、フォーク、焼きもの(陶器)の食器などがあります。以上から考えれば、この命題はいささか言い過ぎであり、当時すでにフランスには多種のソースを用いたフランス料理が成立していたことは確かです。しかしカテリーナの影響でそこに洗練が加えられ、現在のフランス料理へと続く道が整えられたと考えられるべきでしょう。
中村さん、大変面白い話をありがとうございました。小説の完成を会員一同期待してお待ちしております。(橋都)