ボッティチェリの生涯と作品(概要)

3月例会(429回)

・日時:2016年3月11日 (金)19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:小林明子氏(東京都美術館学芸員)

・演題:ボッティチェリの生涯と作品

 

イタリア研究会第429回例会が開かれました。今年は日伊修好150周年の記念の年のため、イタリア関連の美術展が目白押しですが、その嚆矢として東京都美術館で「ボッティチェリ展」が開かれています。そこでイタリア研究会3月例会として、同美術館の学芸員である小林明子さんをお迎えして「ボッティチェリの生涯と作品」という講演をお願いしました。

最初にびっくりしたのですが、これまでボッティチェリの作品は日本で何度も展示されていますが、「ボッティチェリ展」として開催されるのは、じつは初めてだと言うことです。彼の生涯については、同時代の他の画家と較べても資料が少なく不明な点が多いのだそうです。小林さんはまず、その中で今回の展覧会の展示作品中でも屈指の名作である「ラーマ家の東方三博士の礼拝」を手がかりに、フィレンツェの街にとっての東方三博士の礼拝の持つ意味、それとメディチとの関係、そしてこの絵を注文したラーマ家とメディチ家との関連について話を進めました。当時のフィレンツェにおいて大きな力を持っていた俗信徒の宗教団体「東方三博士同信会」とメディチ家、ボッティチェリとの関係はきわめて興味深いものです。

また今回の展覧会のもうひとつの目玉ともなっている「アペレスの誹謗」が、イタリアらしく最後の最後になって貸し出しが許可され、カタログ制作が大変だったこと、そして前期、最盛期とはかなり異なる後期のボッティチェリの作品群の中でこの作品が持つ意味について解説してくれました。彼がおそらくはサヴォナローラの影響を強く受け、そのためにそれまでとは異なるある種の表現主義的な画風へと変化して行ったのが良く理解できました。小林さん、面白いお話をありがとうございました。(橋都)