ルネサンスを超えた男カラヴァッジョ――生涯、作品とその影響 (概要)

4月例会(430回)

・日時:2016年4月6日 (水)19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:川瀬佑介氏(国立西洋美術館研究員)

・演題:ルネサンスを超えた男カラヴァッジョ――生涯、作品とその影響 

 

イタリア研究会第430回例会が開かれました。現在、国立西洋美術館では「カラヴァッジョ展」が開かれていますので、この展覧会の共同監修者である同美術館研究員・川瀬祐介さんに「ルネサンスを超えた男カラヴァッジョ—生涯、作品とその影響」という講演をお願いしました。
カラヴァッジョは殺人を犯して逃亡生活を送りながら絵を描いた無頼の輩として有名ですが、同時に絵画史上大きな影響を与えた革新者でもありました。1571年にミラノで生まれたカラヴァッジョは1595年頃にローマに移り、デル・モンテ枢機卿の庇護を受け、次々に名作を生み出しました。しかし1606年に決闘で相手を殺害したために、ローマを離れナポリ、シチリア、マルタを転々として、ローマに戻る途中にポルト・エルコレで亡くなりました。これが1610年の事ですので、残された作品の制作期間は15年ほどです。しかし常にモデルを用いた彼の自然な人物描写の的確性と明暗を強調した画面構成は画期的であり、カラヴァッジェスキと呼ばれる多くの追随者を産み出しました。
今回の展覧会には、60点余りと考えられている彼の真作の中で11点が集められており、画期的な展示と言えます。川瀬さんは、彼の絵画の革新性と後世の画家たちに与えた影響とを、今回の出品作を中心に話をしてくれました。とくに今回の展覧会が世界初めての公開となった彼の真作と考えられている「法悦のマグダラのマリア」について、その由来や特徴、新作と判断された根拠を詳しく語り、聴衆に感銘を与えました。まだ展覧会をご覧になっていない方はもちろん、すでにご覧になった方も、もういちど確認したくなったのではないかと思います。川瀬さん、ありがとうございました。(橋都)