ティツィアーノの生涯と作品 (概要)

2月例会(440回) 

・日時:2017年2月17日 (金) 19:00-21:00 

・場所:東京文化会館 4F大会議室 

・講師:小林 明子 氏 (東京都美術館 学芸員) 

・演題:ティツィアーノの生涯と作品

 

2月17日に第440回イタリア研究会例会が行われました。

講師は東京都美術館学芸員の小林明子さん、演題名は「ティツィアーノの生涯と作品」でした。4月2日までの会期で、現在東京都美術館では「ティツィアーノとヴェネツィア派展」が開かれています。これは日伊修好150周年を記念するイタリア美術展の最後を飾る展覧会です。日本ではイタリアルネサンスというと、どうしてもフィレンツェとローマを中心に考えてしまいますが、この時期のヴェネツィアは政治的にも大きな力を持っていただけではなく、美術の世界においても大きな影響力を持っていました。その中心に位置するのがティツィアーノ・ヴェチェッリオでした。彼は1490年頃に生まれ1576年に亡くなるまでの長い人生のほとんどをヴェネツィアで過ごしましたが、ヨーロッパ各地の宮廷にパトロンを持ち、ラファエロ、ヴェラスケスをはじめ同時代、後世の画家たちに多大な影響を与えました。

彼が多くのパトロンを持ち、大きな影響力を持った第一の原因はもちろん彼の画力にあるわけですが、それだけではなく彼がパトロンたちの要求を理解して、そこに自分の能力と知性をつぎ込み、パトロンたちに満足感を与えるだけの柔軟性を持っていた点にもありました。小林さんは、ティツィアーノが描いた「教皇パウルス3世の肖像画」と「ダナエ」を中心として彼のこうした能力を技法と文献とからわかりやすく解説してくれました。彼こそは歴史上、もっとも大きな影響力を持った画家の一人と言えるのではないかと思います。小林さんありがとうございました。(橋都)