外国人画家たちが育んだローマとナポリ近郊の風景・風俗絵画の世界 (概要)

5月例会(443回) 

・日時:2017年5月19日 (金) 19:00-21:00 

・場所:東京文化会館 4F大会議室 

・講師:河村英和 氏 (東京大学文学部特任准教授)  

・演題:外国人画家たちが育んだローマとナポリ近郊の風景・風俗絵画の世界 

 

5月19日にイタリア研究会第443回例会が行われました。

今回の講師は建築史がご専門で現在東京大学文学部特任准教授を務めておられる河村英和さん、テーマは「外国人画家たちが育んだローマとナポリ近郊の風景・風俗絵画の世界」でした。

 

ルネッサンス以降、イタリアの風景が絵画に登場するようになりますが、それはあくまで背景であり作品の主題ではありませんでした。しかし17世紀になると風景が画面の中心となる作品が登場します。それを主導したのはプッサン、ロランといったフランスの画家たちでした。彼らの描く風景はけっして現実の風景ではなく、理想風景あるいは英雄風景と呼ばれていますが、その中には現実に存在する廃墟も描かれていました。同時期にオランダ人画家たちによるより庶民的な廃墟と風俗を画題としたバンボッチャータと呼ばれる絵画も人気を博していました。その後カメラ・オブスクーラを用いて描かれたと考えられるヴェドゥータと呼ばれるパノラマ的な絵画が登場し、さらに廃墟を空想的に構成したカプリッチョという絵画も登場します。その後にはよりリアルに廃墟を描く動きが現れますが、写生というよりは北ヨーロッパの人々が抱く廃墟のイメージを強調する事に主眼が置かれていたと言えます。その傾向は18世紀になると崇高美を強調する絵画へと繋がって行き、田園風景よりも谷間や渓流、滝、荒れた海が主要なテーマとなりました。そしてその後19世紀にはローマやナポリ近郊の風景を背景にして民族衣装をまとった美女や若者が描かれるようになります。こうした絵画の流れを主導したのはアルプス以北の画家たちであり、カナレットらのイタリア画家が活躍したヴェネツィアとはいささか様子が異なっていたようです。

 

河村さんは、豊富な画像を提示しながら、こうした風景画、風俗画の3世紀にわたる変遷を分かりやすく示してくださいました。ありがとうございました。(橋都)