海洋都市アマルフィとそのテリトーリオの空間構造(概要)

6月例会(444回)

・日時:2017年6月19日 (月) 19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:陣内 秀信 氏 (法政大学デザイン工学部教授) 

・演題:海洋都市アマルフィとそのテリトーリオの空間構造

 

第444回イタリア研究会例会が行われました。

講師は法政大学デザイン工学部教授で、長く南イタリアの都市で現地調査を行っている陣内秀信先生、演題は「海洋都市アマルフィとそのテリトーリオの空間構造」でした。

アマルフィは織田裕二主演の映画「アマルフィ・女神の報酬」によって日本でもすっかり有名になりました。また和歌山の雑賀崎は「日本のアマルフィ」と呼ばれており、ナポリの南のこの地域と瀬戸内海との風景や街の構造の類似点が指摘されています。しかし陣内先生は、アマルフィの街だけを見ていたのでは、この地域の歴史や文化を理解することはできず、周辺に点在する多くの魅力的な街や産業遺構も考慮する必要があることを強調されました。

 

中世以降海洋都市として、当方との交易で栄えたアマルフィは、その後に表舞台からは退場しますが、一途に衰退への道をたどったわけではありません。V字型の渓谷の両側に街が拡がるという特性から、産業革命以前には最大の動力源であった水車の設置に適しており、製紙業、製鉄業、製陶業などの産業が栄える時代が長く続きました。こうした産業によって蓄積された富が街の維持・発展に用いられ、現在の美しい景観の元となっているのです。さらにそこには他のイタリアの街とは違って、アラブの影響を誇りに感じてそれを表に出すという住民の自由な精神がものを言っています。そしてそれが多くの観光客を呼び寄せるこの地域の最大の財産となりました。長い階段を登らなければ自分の家にたどり着くことができず、荷物の運搬も人力や驢馬、騾馬に頼らなければならない街の生活は過酷といえば過酷ですが、住民は地域で助け合いながら高齢になっても元気に生活しています。「片方の足を海に、片方の足を葡萄畑に」着けていると言われるアマルフィの人たちの生き方から、地方創生のやり方をわれわれ日本人も学ぶことができるのではないかというのが、陣内先生の講演の主旨でした。陣内先生、美しいスライドの数々と、楽しく示唆に富むお話をありがとうございました。(橋都)