“カルチョの国”イタリアを知る(概要)

9月例会(447回) 

・日時:2017年9月21日 (木) 19:00-21:00

・場所:国際化文会館 講堂(東京都港区六本木5‐11‐16)

・講師:小川 光生氏(スポーツライター)  

・演題:“カルチョの国”、イタリアを知る

 

第447回イタリア研究会例会が久しぶりの国際文化会館で行われました。演題名は「“カルチョの国”イタリアを知る」、講師はスポーツライターの小川光生さんです。

 

小川さんは大学院ではイタリア史を専攻、シエナのピッコロミニ家出身の教皇ピウス2世を研究していましたが、その後にサッカーを含むスポーツのライター。コーディネーターに転向したという変わり種です。本田、長友を含む多くの選手、監督とのインタビューを重ねた経験を基に、現在いささか低迷しているイタリアサッカー復活の処方箋も含めてお話しになりました。そもそもなぜイタリアでサッカーが「カルチョ」と呼ばれるのか。もともとが英国発祥の外来スポーツですから19世紀末の黎明期には「フットボール」と呼ばれていました。イタリアの帝国主義諸国への遅れての参加とファシズムの台頭の中で、外来語を排除しようという動きが強まり、新しく「カルチョ」という呼び名が使われるようになりました。

 

カルチョの特徴は勝利へのこだわりと戦術の重視です。これによりイタリアは永年世界ランキングの1位を守っていましたが、2000年に2位になって以降、次第に順位を下げて現在は4位です。この位置は予選での組み合わせからW杯出場にも暗雲を投げかけるもので、イタリアサッカー界、ファンも危機感を募らせています。その原因には個性やテクニックよりも戦術を重視しすぎるという指導の問題もありますが、小川さんは最大の問題点はクラブ経営にあると指摘します。なんとイタリアのクラブで自前のスタジアムを持っているのは、わずかに2チーム(!)なのだそうです。そのためスタジアムのアメニティは前近代的で、多くのファンはスタジアムに足を運ばなくなっており、テレビ観戦が増えています。そのため入場料や関連グッズの収入は低迷して、クラブの経営は放映権に過剰に依存したいささか不健全なバランスに陥っているのです。さらに最近インテルとミランという2大クラブが中国資本に買われた事もイタリアサッカー界に衝撃を与えています。

 

小川さんは、現在このバランスの改善を各クラブが目指しており、それが実現すれば底辺の広いイタリアサッカーはかならず復活すると宣言します。イタリア・ファン、カルチョ・ファンとしてはぜひそれを望みたいものです。小川さん、楽しいお話をありがとうございました。(橋都)