55年前のローマ遊学記(概要)

12月例会②(451回) 

・日時:2017年12月20日 (水) 19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:林寛治氏(建築家) 

 略歴:1936年 東京生まれ 1961年 東京藝術大学建築科卒業 1961年 8月末に出国、

            1961年10月~1962年2月 ROMA'studio prof.arch.G.Positano所属

            1963年4月~1966年4月 在ROMA'studio Rebecchini 所員

            *studio Rebecchiniは;ing.G.Rebecchini+arch.J.Lafente協同事務所.

            1966年6月~1966年10月ドイツ、フランス北西部、北欧4国周遊、

            1966年11月-1967年3月ギリシャ経由トルコ行、アンカラ居住3か月. 1967年4月 帰国

            1967年4月~1974年7月 吉村設計事務所所員

            1974年8月 林寛治設計事務所登録、現在に至る.

・演題:55年前のローマ遊学記

 概要:私は大学を卒業した1961年夏に日本を発って9月はじめにローマに行きました。1960・ロー

            マ・オリンピックの翌年です。55年前の設計事務所での経験を中心に、ローマで感じた都市や建

            築の在りようと仕事と余暇、生活についてお話し致します。

 

12月20日にイタリア研究会第451回例会が開かれました。演題名は「55年前のローマ遊学記」で、講師はイタリア研究会の最古参会員のお一人である建築家の林寛治さんです。

 

林さんは1961年東京藝術大学建築科のご卒業で、当時ローマで建設中だった日本文化会館の設計者吉田教授の助手という名目で卒業後すぐにローマに渡りました。ローマは1960年のオリンピックの直後でしたが、声楽家以外の日本人留学生は非常に少なかったようです。ローマでは日本でいうところの団地が次々と建設されていましたが、日本とは違ってすべてが画一的ではなく、個々にデザインや間取りの違いがあり、見学のし甲斐があったとの事です。

 

林さんは、イタリア人のRebecchini氏とスペイン人のLafuente氏の共同設計事務所に所属して、さまざまなプロジェクトに関わりました。とくにLafuente氏が行ったTodi市近くの聖地に建設された教会と巡礼宿のプロジェクトでは、建築そのものだけではなく、階段から内装・設備に至るまで、スペイン人らしい美意識で統一された仕事ぶりは林さんに大きな感銘を与えました。またオナシスからの注文によるギリシアのスコーピオン島でのボートハウスの設計は残念ながら、計画が中止され未完のまま終わったという事です。ローマでの滞在中に日本人の留学生だけではなく、イタリア人スタッフ、トルコ人留学生など多くの友人を作ったのには、林さんの自由闊達な性格が大いに作用したようです。1966年に設計事務所を退職した林さんは、車を駆ってイタリア全土はもちろん、北ヨーロッパ、ギリシア、トルコまで1年以上をかけて旅行をしたという事です。まだ観光客がほとんど居なかったレッチェ、マテッラ、アルベロベッロを訪問する事ができたのは貴重な体験であったことでしょう。こうしたヨーロッパ、イタリアでの体験が、林さんのその後の建築家としてのお仕事に大きな影響を与えていると考えられ、まさに幸せな遊学であったと言えると思います。林さん、ありがとうございました。

 

変則的に今月2回の例会がありましたので、来月には例会はありません。次回(第452回)の例会は2月19日(月)19時から東京文化会館大会議室で行われます。講師は鈴木正文さん、演題名は「イタリアでかっぽれ」です。イタリア各地で“かっぽれ”を踊って日本文化を紹介してきたという鈴木さんの武勇伝にご期待下さい。(橋都)