ダンヌンツィオと日本:友則,雷鳥,三島?(概要)

第379回例会報告

・日時:2012年1月27日木曜日19:00-21:00

・場所:南青山会館2階大会議室

・講師:村松 真理子 東京大学教養学部准教授

・演題:ダンヌンツィオと日本:友則,雷鳥,三島?


 イタリア研究会第379回例会が開催されました。演題は「ダンヌンツィオと日本:友則,雷鳥,三島?」で,講師は東京大学教養学部准教授の村松真理子先生です。ダンヌンツィオは19世紀から20世紀にかけて活躍したイタリアの詩人・小説家ですが,ムッソリーニとは距離を保っていたにもかかわらず,その行動と生涯からファシズムとの関連が連想され,第2次世界大戦後には意識的に言及されなくなってしまった作家です.しかし彼は明治,大正時代の日本では(フランスにおいても)大変な人気があり,上田敏の訳詩集「海潮音」の最初と最後を飾っていることは,意外と知られていません。また彼は日本の短歌にも興味を持っており,イタリア語で「5, 7, 5, 7, 7」の音節を持つ短歌(まがい)を作るという離れ業も見せています.松村先生は,ある意味で山っ気たっぷりな彼の生涯と,彼の小説を模倣して心中未遂事件まで起こした森田草平,平塚雷鳥のカップル,そして彼に会見することを熱望した多くの日本人達との関わりを,貴重な資料を交えて活き活きと描いてくれました.そして何といっても,誰よりも彼の影響を強く受けたと考えられる三島由紀夫について,ダンヌンツィオと比較しながら,その作品や映像,行動を分析されました。そして三島を単に特異な作家と片付けるのではなく,日本において,ダンヌンツィオ的なものが受け入れられる素地が脈々と続いていると考える

べきではないかと語られました。非常に興味ある刺激的なお話で,講演後には多くの質問やダンヌンツィオと日本との関係に関する新しい情報が寄せられ,時間が足りなかったのが残念なほどでした.村松先生,どうもありがとうございました。(橋都)