2013年 講演会レポート

ダンヌンツイオに夢中だった頃(概要)

402回例会

・日時:2013年12月20日(金)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:村松 真理子(東京大学)

・演題:ダンヌンツイオに夢中だった頃

 

 12月20日に2013年最後のイタリア研究会第402回の例会が開かれました。今年2013年はイタリアの詩人・作家であるガブリエーレ・ダンヌンツィオの生誕150周年です。東京大学でも駒場キャンパスを中心に,ダンヌンツィオをテーマとした展覧会,シンポジウムなどさまざまな催しが行われました。その中心となって活躍された東京大学総合文化研究科准教授の村松真理子さんに「ダンヌンツィオに夢中だった頃」という題でお話をお願いしました。ちなみにこの題は,13日まで東京大学駒場博物館で行われていた展覧会と同じ題名です。

1863年にアドリア海沿岸の小さな街ペスカーラで生まれたダンヌンツィオは19738年に,彼の最後の作品と言って良い,ガルダ湖畔の邸宅とも建築複合体とも呼ぶことの出来るヴィットリアーレで亡くなりました。この年号を見れば分かるように,彼は近代イタリアの誕生とともに生まれ,統一イタリアがムッソリーニの指揮の下に破滅的な戦争へと進む直前に亡くっています。そのため彼はイタリア国民からは,まさに近代イタリアの発展の象徴と目され,彼自身もそれを意識してプロモーションしたことが,生前に得た絶大な人気のひとつの原因と思われます。もちろん彼が美しいイタリア語を作り出すために,自らのロマンス語の知識を生かして奮闘したことも忘れてはなりません。

 村松先生は,華麗な女性遍歴を重ねながら次々とベストセラーを生み出したダンヌンツィオの生涯と,ムッソリーニとの微妙な関係,当時の日本の知識人に与えた,現在からは考えられないほどの多大な影響を,たいへん面白く語ってくださいました。とくに展覧会で展示されたヴィットリアーレ財団からの提供によるダンヌンツィオの軍服,靴,日本との交流を示す書簡,彼の提唱によるイタリアから日本への初飛行の航路図などの映像には,多くの方が興味をそそられたようです。村松先生,ありがとうございました。(橋都)

あるイタリア人の個人的体験としての日本(概要)

第401回例会

・日時:2013年11月29日(金)19:00-21:00

・場所:南青山会館(表参道)

・講師:Giorgio AMITRANO(イタリア文化会館東京館長)

・演題:あるイタリア人の個人的体験としての日本 


 イタリア研究会第401回の例会が開かれました。講師は日本文学の翻訳者としても活躍しているイタリア文化会館東京館長のジョルジョ・アミトラーノさん,演題名は「あるイタリア人の個人的体験としての日本」です。もともと英語が得意で英文学に興味を持っていたアミトラーノさんが,ナポリ東洋大学に入学した時に,日本語を選択したのは,全くの偶然,気まぐれであったということですが,それには黒澤明の映画が好きであったご両親の影響もあったようです。入学後には日本文学のイタリア語訳を読みふけり,とくに川端康成と中島敦に惹かれたということです。そして卒論のテーマとして中島敦を選び,資料探しを目的に日本に来たことが,彼の転機になりました。初めてでありながら,懐かしさを感じリラックスすることが出来た東京の街と,須賀敦子さんに出会ったことが,アミトラーノさんのその後の人生を決定づけたのです。そしてご自分の最初の日本文学の翻訳として「中島敦・短編集」を出版し,さらに須賀さんに勧められた吉本ばななの「キッチン」を世界で初めて外国語訳をして大成功をおさめました。その後は,村上春樹の小説など多数の現代日本文学の翻訳を行い,多くの翻訳賞を受賞されています。美しく格調高い日本語で語られたアミトラーノさんの個人史は,最後にリズムの美しい宮沢賢治の詩「雨にも負けず」のイタリア語訳の朗読で締めくくられました。アミトラーノさんの素晴らしいお話に,参加者一同が感動し,質問が続出しました。参加者との日本文学談義は,その後の懇親会でもいつまでも続きました。アミトラーノさん,本当にありがとうございました。 (橋都)

イタリアと私(概要)

第400回記念講演会

・日時:2013年10月6日(日)14:00~16:00

・場所:国際文化会館・講堂(六本木)

・講師:青柳 正規(文化庁長官、元国立西洋美術館館長)

・演題:イタリアと私


 10月6日日曜日,イタリア研究会の第400回記念例会・祝賀会が六本木の国際文化会館で開かれました。

 イタリア研究会,当時はイタリア問題研究会と呼ばれていましたが,の第1回例会は1976年9月26日に開かれ,それから37年を経て,めでたく400回の例会を迎える事が出来ました。当日はそれを記念して記念例会と祝賀会が開かれたわけです。14時から行われた記念例会の講師は,東大名誉教授・前国立西洋美術館長で,今年7月に文化庁長官に就任された青柳正規さん,演題名は「イタリアと私」でした。

 1969年に東京大学文学部大学院修士課程を終えた青柳さんは,すぐにローマ大学に留学して,西洋史学,古典考古学の勉強を始めました。ラテン語を自由に読みこなすヨーロッパ出身の学生たちとの古典教養の格差に愕然としながらも,着実に学問を身につけていきました。そして持ち前のバイタリティーと,人を味方に付ける人柄とを武器に,実地での調査を開始して,最初はポンペイでの発掘を行いました。それに次いで,シチリア島のアグリジェント近くのレアルモンテ,エトルリア地方のタルクィニアの発掘調査を行い,そして2004年からはヴェスヴィウス山の北側にあるソンマ・ヴェスヴィアーナの発掘を継続しています。ここからは女性像とバッカス像の2体の非常に美しい大理石彫刻を発見して,大きな話題となりましたが,さらに多くの遺物から,この遺跡が埋没した5世紀にも,この地方と地中海各地とが,交易によって結ばれていた事を証明し,蛮族の侵入により荒廃した末期のローマ帝国,というイメージを覆すという重要な成果を上げています。

 講演後に多くの質問が出ましたが,青柳さんは,実地の発掘調査が考古学には何よりも重要である事,日本もこの分野で大きな功績を残してきたし,今後も残す事ができるので,若い日本人がこの分野に参加する事を希望していると述べておられました。青柳さん,400回記念例会にふさわしい素晴らしいお話をありがとうございました。(橋都)

生誕200年,ジュゼッペ・ヴェルディの虚像と実像(概要)

第399回例会

・日時:2013年9月26日(木)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:香原 斗志 オペラ評論家

・演題:生誕200年,ジュゼッペ・ヴェルディの虚像と実像


 イタリア研究会第399回例会が開かれました。今年がヴェルディ・イヤーであることを記念した講演で,演題名は「生誕200年,ジュゼッペ・ヴェルディの虚像と実像」,講師はオペラ評論家の香原斗志さんでした。ヴェルディと言えば,それまでのオペラとは違ったダイナミックで力強いオペラを作り出した作曲家で,とくに「ナブッコ」を始めとしたオペラが,当時のイタリア人の愛国心を刺激して,祖国統一の原動力のひとつともなった,というのが定番の解釈だと思います。しかし香原さんは,少なくともナブッコの初演の時には,愛国心の熱狂的な盛り上がりはなかった事,直後に行われたいわば敵国であるオーストリアのウィーンでも好評を博した事を考えると,ヴェルディ・イコール,リソルジメントの作曲家というのは,後に作られた伝説と考えられるとの,最近の研究成果を示されました。またダイナミックなオペラ作家という点に関しても,最近刊行されつつあるヴェルディ全集では,彼がこれまで考えられていたよりも,細かい強弱の指示を付けており,ロッシーニやドニゼッティの伝統を踏まえた装飾的な歌唱法も身につけていた作曲家である事が分かってきたと言う事です.最後に聴いたバロックオペラを得意とするソプラノのSimone Kermes の歌う「イル・トロヴァトーレ」のレオノーラは,まさにわれわれのヴェルディ感を覆すものでした.香原さん,面白いお話をありがとうございました。 (橋都)

料理とワインを通してみるイタリアの豊かな多様性(概要)

第398回例会

・日時:2013年8月5日(月)19:00-21:00

・場所:南青山開館2階大会議室

・講師:宮嶋 勲 ワインジャーナリスト

・演題:料理とワインを通してみるイタリアの豊かな多様性


 イタリア研究会第398回の例会が行われました。演題は「料理とワインを通して見るイタリアの豊かな多様性」で,講師はワインジャーナリストの宮嶋勲さんです。宮嶋さんはイタリアの文化,料理,ワインの多様性の源泉が,まずは南北に長く,しかも中央に山脈が走っているという地理的な特長と,19世紀まで政治的に統一されずに,各地が異なった支配者,政治体制の元にあったという歴史的な特長とにあることを示されました.これがワインにおいても,フランスワインに特徴的な,ピラミッド型ヒエラルキーに従わない,地方独特の品種と製造法による,多様なワインを生み出していることを,明らかにしてくれました。そしてワインの醸造で最も重要とされるテロワールとは,土壌と気候だけではなく,作り手の心も含めた概念であること,イタリアにおいても各州の県民性(州民性?)がそれぞれ特徴的なワインを生み出す元になっていることを,軽妙な話術で語られ,会場は笑いに包まれました.最後に述べられた「ワインは舌だけで味わう物ではなく,頭でも味わう物です」という言葉は,皆さんの心に響いたのではないでしょうか。じつはこの日,前もってお知らせはしませんでしたが,3種類のイタリアワインの試飲が講演中に行われ,講演終了後には,このワインの購入も可能でしたので,多くの方が購入されたようです.宮嶋さん,ワインを提供して下さったフード・ライナーさん,ありがとうございました。 (橋都)

ヴェネツィアのカーニバルと演劇(概要)

第397回例会

・日時:2013年7月25日(木)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:鈴木 国男 共立女子大

・演題:ヴェネツィアのカーニバルと演劇


 7月25日,イタリア研究会第397回例会が開かれました。演題名は「ヴェネツィアのカーニバルと演劇」,講師は演劇史,演劇論がご専門の共立女子大学教授鈴木国男先生でした。鈴木先生は,ギリシャからイタリアバロックまでのヨーロッパの劇場と演劇の変遷を90分にまとめて話すという離れ業を演じられましたが,これがじつに面白い内容でした。現在のヨーロッパのオペラ劇場がなぜあのような形になったのか,そこには劇場の歴史と演目の内容の変化が深く関わっています。そして演劇文化の中心であったイタリア,中でも18世紀の滅亡寸前のヴェネツィア共和国にヨーロッパ中から享楽を求めて,多くの人々が集まり,仮面で自らのアイデンティティを隠しながら,カーニバルと演劇とを楽しんだわけです。こうしたお話の中に「オペラはギリシャ悲劇の誤解から生まれた」「ゴルドーニは18世紀の三谷幸喜である」といった警句がちりばめられ,大変に刺激的で面白い講演でした.鈴木先生ありがとうございました。(橋都)

レオナルドと神秘思想ー作品調査の現場から(概要)

第396回例会

・日時:2013年6月14日(金)19:00-21:00

・場所:南青山会館2階大会議室

・講師:池上 英洋 東京造形大学

・演題:レオナルドと神秘思想ー作品調査の現場から


 南青山会館にて第396回例会が行われました。講師は東京造形大学准教授の池上英洋先生で演題は「レオナルドと神秘思想ー作品調査の現場から」でした。今回のご講演内容は多分にオフレコ的要素があり、MLにも詳細には書けませんがレオナルドの作品とされているある作品の真贋に関するフランスの調査チームとの共同研究の成果を学術的歴史的事実、また科学的調査の結果などをもとに説明され、また晩年のレオナルド、レオナデルスキと呼ばれる彼の弟子、追随者たちが作品に示した両性具有性と当時の王朝で研究されていた錬金術、グノーシス主義との関連性について「洗礼者ヨハネ」を中心に様々な作品、スケッチ画などを示しながらご説明くださいました。テレビ番組をみているかのような流暢なプレゼンテーションで私だけでなく聴衆の皆様も大いに楽しめたのではないでしょうか。池上先生、ありがとうございました。 (岡田)

デザインと対話による日本とイタリアの新たな関係づくり(概要)

第395回例会

・日時:2013年5月24日(金)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:桐山 登士樹 株式会社TRUNK代表 デザインディレクター

・演題:デザインと対話による日本とイタリアの新たな関係づくり


 イタリア研究会第395回例会が開かれました.テーマは久しぶりにデザインで,演題名は「デザインと対話による日本とイタリアの新たな関係づくり」,講師はデザインディレクターで株式会社TRUNK代表の桐山登士樹さんです。桐山さんはデザイン系の雑誌の編集の仕事をしていた時に,イタリアデザインと出会い,イタリアのデザイナーを使ったデザインプロジェクトを作り出すとともに,イタリアデザインの展覧会を多数プロデュースして,イタリアデザインのすばらしさを日本に紹介する事に力を尽くしました.そして2004年以降は,ご自分でデザインをプロデュースするに至り,56年の歴史を持つ総合デザイン展「ミラノ・サローネ」で,トヨタLEXUSやキャノンのデザインを担当しました。現在,イタリアのデザインは,国の経済の停滞の影響を受けて,一時よりも地盤が低下している事は否定できないという事です.そのために,イタリア人デザイナーたちも,イタリア以外のヨーロッパ諸国で仕事をするようになってきています.しかしやはりイタリアデザイン界には底力があり,今後はBRICSなど新興諸国からの資本も受け入れて,再生して行くだろうという事です.そのきっかけになると期待されているのが,2015年にミラノで行われる万博で,桐山さんはここで日本館の総合プロデューサーを務められるという事ですので,楽しみです.講演終了後は,「なぜイタリアのブランドは付加価値の高い製品を生み出す事ができるのか」「イタリアデザイン界の停滞の原因は,イタリア経済だけなのか」など多くの質問が出て,活発な議論が行われました.桐山さん,面白いお話をありがとうございました。 (橋都)

死産だったイタリア第二共和制―ベルルスコーニ,モンティ,グリッロ(概要)

第394回例会

・日時:2013年4月12日金曜日19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:村上信一郎

・演題:死産だったイタリア第二共和制―ベルルスコーニ,モンティ,グリッロ


 4月12日にイタリア研究会第394回例会が開かれました.イタリアでは2月に総選挙が行われましたが,いずれの政党も多数派を占めることができず,組閣できない異常事態が続いています。今回の例会は,現在のこのイタリアの政治状況を主題に,「死産だったイタリア第二共和制―ベルルスコーニ,モンティ,グリッロ」と題して,神戸外国語大学教授・村上信一郎先生を講師として行われました。村上先生は,いつもながらの軽妙なお話ぶりで,戦後の共和国憲法の成立から,キリスト教民主党時代,ベルルスコーニ時代,そしてついにベルルスコーニ時代が終わったと考えられるこの選挙までのイタリア政治の流れを分かりやすくお話しくださいました。そしてインテリ層にはわかりにくいベルルスコーニの人気の秘密,今回の総選挙の唯一の勝者と考えられるベッペ・グリッロの五つ星運動の持つ意義についても解説してくださいました。これからのイタリア政治がどうなるか,誰にも予想が付かないようです。われわれも目を離すことができません。(橋都)

ラファエロの芸術- -展覧会によせて(概要)

第393回例会

・日時:2013年3月18日(月)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:水野 千依 京都造形大学

・演題:ラファエロの芸術:展覧会に寄せて


 イタリア研究会第393回の例会が開かれました。現在国立西洋美術館で開かれている「ラファエロ展」にちなんだ「ラファエロの芸術:展覧会によせて」という演題で,講師は京都造形芸術大学教授の水野千依先生です。先生は今回の展覧会に出品されているラファエロの作品を中心として話を進められましたが,師匠であるペルジーノの影響が著名であった初期の作品から,ルネッサンス芸術の美の概念を確立したとも言える中期の作品,そして複雑なイコノロジーを含み,またマニエリスムへ一歩踏み出したとも見える晩年の作品までの,ラファエロの芸術の進展を分かりやすく説明してくださいました。また今回の展覧会でもっとも注目を集める作品「大公の聖母」については,オリジナルと修復との関係,とくに最近では,オリジナル絶対主義への疑問が投げかけられているという傾向についてもお話しくださいました。大変充実した講演で,まさにあっという間の100分間でした。懇親会でも,絵を見る視点がこれまでとは変わった,という感想が多くの参加者から寄せられました。水野先生ありがとうございました。 (橋都)

ピランデッロの短編について -カオス・シチリア物語を中心に-(概要)

第392回例会

・日時:2013年2月19日(火)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:白崎 容子 慶應義塾大学文学部

・演題:ピランデッロの短編について -カオス・シチリア物語を中心に-


 イタリア研究会第392回例会が開かれました。演題名は「ピランデッロの短編について:カオス・シチリア物語を中心に」,講師は慶應義塾大学文学部教授の白崎容子先生です。ご存じの方も多いかと思いますが,ピランデッロの短編集「1年間の(あるいは1年のための)物語」を題材として,イタリアの映画監督タヴィアーニ兄弟が1984年に「カオス・シチリア物語」を製作し,この映画は日本でも上映されました.白崎先生は,この短編集から映画で使われた短編6編を含む16編を尾河直哉さんと一緒に翻訳され,昨年「ピランデッロ短編集:カオス・シチリア物語」として出版されたのです。今回は有志会員とともにタヴィアーニ兄弟による映画「カオス・シチリア物語」を鑑賞した後に,通常の例会が行われました。映画で使われている短編は「ミッツァロのカラス」「もうひとりの息子」「月の病」「甕」「レクイエム:主よ,彼らに永久の安らぎを」「登場人物との対話:母との対話」です。これらの6編はあきらかにピランデッロの故郷であるシチリアを舞台にしていると考えられます。白崎先生は,若くしてシチリアを離れながら,心情的にはシチリアへの親近感を忘れなかったピランデッロの作品に認められる,シチリアの土俗性と寓話性,そして諧謔性と訳される「umorismo」が,この短編集にはとくに色濃く認められ,タヴィアーニ兄弟はそれをうまく映像化していることを,多くの場面を例に挙げながら示されました.とくに「甕」「レクイエム」では,権力と民衆との対立がテーマとなっており,そこで発揮される民衆のしたたかさが,作品にユーモアと奥行きとを与えていることを強調されました.いつも面白いお話で,われわれイタリア研究会会員に刺激を与えてくださる白崎先生,ありがとうございました。 (橋都)

今のイタリアにおける日本文化 ~アニメからジャニーズまで(概要)

第391回例会

・日時:2013年1月18日(金)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4階大会議室

・講師:Valeria Lazzaro ローマ大学東洋学部日本語学科卒

・演題:今のイタリアにおける日本文化 ~アニメからジャニーズまで


 イタリア研究会第391回例会が1月18日(金)上野・「東京文化会館」に於いて開催されました。厳寒にも拘わらず多くの会員が出席、質疑応答も活発で盛会でした。今回の講師は、ローマ大学東洋学部日本語学科を一昨年12月に卒業され、現在日本に留学中の弱冠25歳Valeria LAZZAROさん、演題は、「今のイタリアに於ける日本文化~アニメからジャニーズまで」。以前、イタリアでの日本文化と言えば空手、柔道、黒沢明の映画、三島由紀夫の小説などが主流であったが、1970年代半ば日本製アニメがTVに登場して以来、若者の間で日本のアニメ、漫画、ゲームなどの人気が拡大し、今やこれが一大ストリームとなっている。ルッカでのコミコン(年一回開催のアニメ、漫画、ゲーム関連イベント)は1986年にスタートしたが次第に参加者が増え、2012年には18万人に達した(これは世界第三位)。ここでは日本食、日本のアイドルやバンドのグッヅ、制服なども出品されアニメ・漫画のファンのみならず多くの日本文化の愛好家が参集する。今日ではルッカと同様なイベントが、ローマ、ミラノ、ナポリ、パレルモ、他で開催されており、夫々数多くの参加者を集めている。様々な日本グッヅの店も増えつつあるが、その一つ、ローマ・「ネコショップ」(講師の姉上ヴァレンティカートさんが共同店長の1人)と本会場をスカイプで繋ぎ、日本ファンとの接点現場の状況を視聴。同店の人気商品例として漫画(大きなコーナー)、アニメCD、コスプレ、嵐の写真付き弁当箱、折り紙セット、各種シール、制服、ヘアアート、各種ゲーム、日本語教科書、他多数。これに加えて、お店ではアニメコンサート、日本語教室、日本史教室、日本映画会、ゲーム大会、コスプレ大会などのイベントも開催し、日本文化の紹介に努めている。東日本大震災の時は募金活動も行った。来店者の大半は若者だが30代のお客も多いとのこと。中継後、映画、小説やミュージカルにも言及。特に堂本光一のミュージカル「エンドレスショック」は講師が大好きな作品で、日本語の出来ない人にもどうしてもこの作品を見せたいと思い、講師自らイタリア語字幕を作成した(会場で本作品の一部を鑑賞した)。ローマのお店との「現場中継」を交えての、イタリアでの日本文化浸透の現状報告は正に興味津々聴衆の耳目を惹きつけて止まず、あっと言う間の100分でした。Valeriaさん、お忙しい中貴重なご講演どうもありがとうございました。 (猪瀬)