イタリア外交の秘話(概要)

第410回例会

・日時:2014年8月22日(金)19:00-21:00

・場所:南青山会館2F大会議室

・講師:小林 明 日本経済新聞編集委員 

・演題:イタリア外交の秘話


 8月22日にイタリア研究会第410回例会が開かれました。講師は日本経済新聞ミラノ支局長を長く務めた,現編集委員の小林明さん,演題名は「イタリア外交の秘話」でした。小林さんは留学期間を含めると6年間ミラノに滞在しており,その間にイタリアの政治・外交のさまざまな変動にも立ち会ってきました。そしてイタリアが他国はできないような外交上の役割を果たすのを目撃したのですが,そのひとつが対北朝鮮外交でした。イタリアは2000年1月に,他のヨーロッパ諸国に先がけて北朝鮮と国交を樹立しました。それにはさまざまな理由があるのですが,ローマにある国際連合食料農業機関(FAO)に北朝鮮が代表を常駐させていたことが,大きく影響していると考えられます。もしこの年のアメリカ大統領選挙で民主党の候補ゴアが勝っていたら,北朝鮮を巡る世界情勢は大きく変わっていたかもしれません。またもう一つの話題は,イタリア財界の陰の立て役者であったエンリコ・クッチャに関するものでした.彼は2000年に亡くなっていますが,亡くなる直前まで「株は数ではない,重さである」という信念の元,クモの巣のような持ち株組織を作り出し,イタリア経済を裏から牛耳っていました。彼はそれにより,イタリアの企業を外資から守っていると自負していました。しかし現在ではグローバル化により,イタリア企業もよりオープンな形で世界市場で勝負するようになってきました。その意味でクッチャの死は,ヨーロッパでも特殊な位置を占めていた。ファシズム時代から連続する,完全な自由市場とは異なった戦後イタリア経済の終焉を象徴していたと考えられます。(橋都)