盛装アマゾネス −サルッツォのマンタ城壁画「9人の英雄と9人の女傑」の紋章と服飾−(概要)

第413回例会

・日時:2014年11月17日(月)19:00-21:00

・場所:南青山会館2F大会議室

・講師:伊藤亜紀 国際基督教大学

・演題:盛装アマゾネス −サルッツォのマンタ城壁画「9人の英雄と9人の女傑」の紋章と服飾−


 11月17日に,イタリア研究会第413回例会が開かれました。

 講師はイタリア服飾史の研究家で国際基督教大学教養学部教授である伊藤亜紀さんです。演題名は「盛装アマゾネス−サルッツォのマンタ城壁画《9人の英雄と9人の女傑》の紋章と服飾−」でした。サルッツォはピエモンテ州にある都市で,かつては独立した都市国家でしたが,サヴォイア公国に取り囲まれていたため,それに対抗しなければならない意味もあり,フランスとの関係が大変深い国家でした。そこにあるマンタ城のサーラ・バロナーレの壁面に描かれた壁画の,文化史的な解析が主題です。この壁画にはヘクトール,アレキサンダー大王,アーサー王など9人の英雄も描かれているのですが,それよりも興味深いのが,9人の女傑たちです。彼女たちは英雄たちに較べると知名度が低いのですが,その典拠はフランスのバラードにあります。伊藤さんは,彼女たちの服装や紋章を分析することによって,この城の持ち主であったヴァレラーノ・ディ・サルッツォの教養や文化的な背景がイタリアよりもフランス的であることを示しました。また彼女たちが女傑と呼ばれながら,武装した姿では描かれておらず,きわめてフェミニンに描かれていることから,この時代(15世紀前半)の女性の社会的な位置づけについても考察されました。こうした美術史的に必ずしも有名ではない作品の分析からも,多くのことが見えてくる文化史の面白さを味わうことのできた講演でした。伊藤さん,ありがとうございました。(橋都)