グエルチーノとイタリア・バロック美術(概要)

第417回例会

・日時:2015年3月16日(月)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4F大会議室

・講師:渡辺 晋輔 国立西洋美術館主任研究員

・演題:グエルチーノとイタリア・バロック美術


イタリア研究会第417回例会が開かれました。 現在、国立西洋美術館で「グエルチーノ展」が開かれているのに合わせ、この展覧会を企画した国立西洋美術館主任研究員の渡辺晋輔さんに「グエルチーノとイタリア・バロック美術」という題名でのお話しをお願いしました。 渡辺さんは、日本人の美術におけるブランド志向のため、この展覧会は入場者数では苦戦しているが、国立の美術館には、単に人気のある画家の作品だけではなく、知られざる重要な画家を紹介する使命があるという事から話を始めました。そしてグエルチーノの故郷で、多数の作品を収蔵しているチェント市の美術館が3年前に地震の被害に遭い、展示が不可能になったことからこの展覧会が実現し、展覧会の収益は、美術館の修復に当てられることを強調しました。 グエルチーノは17世紀、対抗宗教改革のまっただ中に、その理念を具現化した画家のひとりです。若い頃には故郷のチェント、その後に短期間ローマで活躍したこともありましたが、活躍期間のほとんどをボローニャで過ごしました。そのために日本での知名度は低いのですが、17世紀、18世紀には高い評価を得た才能のある画家です。初期にはまさにバロックというスタイルの絵を描いていましたが、後期には古典主義的なスタイルへと変わっています。 渡辺さんは、グエルチーノの絵そのものが面白いだけではなく、彼を中心として同時期の他の画家たちの作品と比較して、お互いの影響を考えることによって、イタリア・バロック絵画全体が見えてくることを示しました。渡辺さんのお話は、いつもながら内容が高度にもかかわらず、大変分かりやすく、聴衆もじっと聴き入っていました。「グエルチーノ展」は5月31日まで開かれています。(橋都)