イタリアと日本の服の違い(概要)

5月例会(419回)

・日時:2015年5月25日(月)19:00-21:00

・場所:東京文化会館4F大会議室

・講師:船橋幸彦氏 在伊経験35年のサルト(洋服職人)

・演題:イタリアと日本の服の違い


イタリア研究会第419回例会が行われました。
講師は在伊33年の経験を持つサルトである船橋幸彦さん、演題名は「イタリアと日本の服の違い」でした。
長崎の洋服店に生まれた船橋さんは、高校時代から洋服作りの本場であるイタリアでの修行に憧れていました。そして東京、ロンドンでの修行の後に、ローマに渡りましたが、そこで見た洋服作りは、日本や英国におけるものとは大きく異なっていました。イタリアではまだ工業化が行われておらず、職人の数も多かったために、洋服作りは基本的に手縫いで行われていたのです。
その後に労働者保護のための法律が災いして、職人の数が激減してイタリアでも機械縫いが主流となりましたが、手縫いの味を残した洋服作りが現在まで続いています。そうした伝統のなかでの試行錯誤から船橋さんは、首の後の部分に支点を持ち、前後左右にバランスの取れた洋服という「やじろべえ理論」に到達し、特許を取得しました。会場では実際に聴衆のひとりがモデルとなり、この理論に基づいて洋服に修正を加えると、目に見えて身体へのフィットが向上し、着ている本人の快適さも増強するという魔法のようなテクニックを披露してくれました。
船橋さんは現在、この理論がより広く応用できるように、3Dカメラを用いた型紙製造技術に取り組んでいるそうです。早くわれわれもその恩恵に与って、美しく快適な洋服を着ることができるようになって欲しいものです。船橋さん、興味深いお話をありがとうございました。(橋都)