イタリアでの生活と制作から思ったこと(概要)

7月例会(445回)

・日時:2017年7月14日 (金) 19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:松山 修平 氏(画家) 

・演題:イタリアでの生活と制作から思ったこと

 

第445回例会が開催されました。講師はミラノ在住の画家・松山修平先生。

演題は「イタリアでの生活と制作から思ったこと」。

松山画伯は1976年21歳で留学のため渡伊、以来今日までイタリア滞在は41年に及びます。今回のお話のキーワードは「時の長さ」。渡伊直後、ペルージャのバールで席に座った時のこと、「(日本に比べて)こんなに時間が長いのか、考えることを持たせてくれる国なのだ」とつくづく実感した。現地での生活と製作を通じてイタリアは、「熟成するのを待ってくれる国」、「長い目で見守ってくれる国」、「包容力を持った国」、「自分の感性で観に来てくれる国」「本当に心に響く絵を描いてくれよと言う国」だと思う。

1979年ペルージャ・ブリオーリ宮での初個展以降、イタリア、日本、アメリカを中心に 個展100回以上、グループ展200回以上を数える。特に重要な展覧会として、ベネツイアビエンナーレとの同時期、1993年、95年、97年、99年、2001年の5回に亘りSHIN-ONを開催した。SHIN-ONとは絵を描き始めて28年経った1989年に浮かんだテーマで、以来全ての作品にこのテーマを付している。

SHIN-ONの”SHIN”は、「自身の中にある心の響き」、”ON”は「自己に同調する周波数、バイブレーションの表現」を意味し、漢字で表すと心音、新音、真音、伸音、慎音、森音、震音、進音、信音、神音、親音、振音、深音、身音、唇音、浸音の16通りだが、松山画伯は一生をかけて「このテーマで何を描けるのか」を追求されている。因みに画伯はホームページで”SHIN-ON”についてイタリア語で以下のように説明されている。

“Sin dall’inizio, quando ho dovuto spiegare il significato di Shin-On, ho sempre detto che è una sorta di grido del cuore, un’espressione in sintonia con il sé”.

SHIN-ONの画法は混合技法によるアートであり、基本的には合板上に「石膏」あるいは「スタッコ」でレリーフ状の画面をつくり、そこに岩彩やアクリルなどを何回か重ねて塗り、描き、その上から何層かの薄い紙をずらして貼り、最後に水彩でしみこませながら、最終的な色を決めて完成させてゆくとのこと。

画伯は、ニューヨーク・ウオールストリートジャーナル紙本社ビルで展示された18mの作品を始め多数の秀作をスライドで紹介されたが、作品など詳細は下記2つのホームページをご参照ください。

http://www.shin-on.info/ (日本のホームページ) www.shuheimatsuyama.com

一方 画伯は、空手道松涛館流6段でイタリア伝統空手道連盟指導員コース教授を務められ現地での指導にあたられておられることから、イタリアの空手事情、東京オリンピックでの正式種目採用に伴う関心の高まりなどについてのお話があった。

 

ご講演後は時間切れになるまで質疑応答が活発に交わされたが、画伯の明るくざっくばらんなお人柄もあって会場は終始愉快な雰囲気に溢れ大いに盛り上がった。松山先生、本当に有難うございました。

(猪瀬)