イタリアでかっぽれ(概要)

2月例会(452回) 

・日時:2018年2月19日 (月) 19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:鈴木正文氏 (鈴乃家流かっぽれ家元 鈴乃家梅奴(すずのや うめやっこ))

   略歴:1943年、浅草生まれ。

イタリア 国立Perugia外国人大学 初等科卒業 国立Firenze大学経済学部観光経済学科卒業

イタリアより帰国後、即「イタリア政府観光局 東京支局」局長より入局を勧められる。広報、旅行代理店等担当。

学生時代に人形町の寄席「末広」で噺家が落語を終え、「それでは、踊りを披露いたします」といい、化粧や鬘など無い姿で端唄の「奴さん」「深川」などを踊るこの「間」、この「粋さ」に感動を覚える。かっぽれへの興味は母の稼業が浅草の花街で「料亭」でしてたので20歳ころからあったが、踊りを習い始めたのは25歳ころより。師匠は初代櫻川ぴん助。

現在は、弟子への指導、自主公演会開催、ボランティア出演など活動中。

・演題:イタリアでかっぽれ 

   概要:

1)かっぽれとは、発祥の謎

発祥の定説は大阪住吉大社の「住吉踊り」

これが江戸に来て、大道芸、歌舞伎にもなり、噺家や幇間が踊る。

2)私とイタリア

学生旅行でイタリアへ初めて行き、そこでイタリアが持つ観光資源の底力に驚愕。

イタリアの大学で「観光産業を大切にする国で習う観光学」を体験。

3)私とかっぽれ

母の稼業は浅草花街の料亭。我が家に芸者や幇間が出入り。

人形町にあった寄席の「末広」で噺家の口演後の「余芸としての端唄舞(はうたまい)ー深川、奴さんー」に。「これは粋だ!」と衝撃を受ける。

4)イタリアでかっぽれ

明るい性格を持つイタリア人に日本の伝統芸を紹介したかった。昨年の講演は「江戸時代、江戸文化」を強調。 

5)実演・かっぽれ  お楽しみ。

(鈴木正文) 

 

イタリア研究会第452回例会が開かれました。講師は鈴木正文さん、演題名は「イタリアでかっぽれ」です。この題名に「?」となった方も多いかもしれません。なぜこの2つが結びついたかについてから、講演は始まりました。

鈴木さんは学生時代の旅行でアルプスの北からヴェネツィアに出た時に、空の明るさと街の美しさとに生涯忘れられない感動を覚えて、イタリア留学を決意しました。ペルージア外国人大学を経てフィレンツェ大学の観光経済学科を卒業し、帰国後イタリア政府観光局に職を得ました。その後はマスコミや旅行代理店に同行して数え切れないほどイタリアに行っています。一方、鈴木さんのご実家は浅草の待合で、しょっちゅう芸者さんや幇間さんが出入りしており、お座敷芸が身近だったそうです。ある時、人形町の寄席で、噺家が落語の後に端唄舞の「奴さん」を踊るのを見て、その粋に魅せられて端唄舞のかっぽれを志すようになりました。当時の名人であった櫻川ぴん助師匠に弟子入りして修行を重ね、現在は鈴乃家かっぽれ家元鈴乃家梅奴となっています。

乗りの良いイタリア人にかっぽれが受け入れられるのではないかと考えた鈴木さんは、かっぽれを手がかりとして、現在の日本文化の源流となっている江戸文化を広めるために、イタリアで江戸文化の講演とかっぽれの公演を続けています。昨年はナポリ、シチリアのパレルモ、カルタジローネで公演を行い、大いに受けたそうです。また鈴木さんは、かっぽれの起源を求めて日本各地の関連する芸能を訪ね歩いています。かっぽれの起源は、大阪の住吉大社の豊年の舞であった住吉踊りにあり、それがお伊勢参りなどによって江戸に伝わり、他の芸能の影響も受けながら大道芸として定着しました。それがさらに歌舞伎や噺家に取り込まれて、現在のかっぽれとなっているようです。最後に鈴乃家梅奴師匠のかっぽれが披露されましたが、その着物姿の美しさと所作の粋とに聴衆は魅せられました。鈴木さん、面白いお話をありがとうございました。(橋都 浩平)