イタリア政治の行方(概要)

4月例会(454回) 

・日時:2018年4月11日 (水) 19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:福島良典氏(毎日新聞 オピニオングループ編集委員)

   略歴:1963年 埼玉県生まれ

1986年 早稲田大学第1文学部フランス文学科卒業

1986年 毎日新聞入社

1986~1995年 秋田・宇都宮支局、外信部、政治部

1995~1999年 エルサレム支局長

2001~2005年 パリ支局長

2008~2011年 ブリュッセル支局長

2012~2017年 ローマ支局長

2017年‐ オピニオングループ編集委員

・演題:イタリア政治の行方

 

   概要:3月4日のイタリア総選挙でポピュリスト勢力の「五つ星運動」や「同盟」が躍進しました。左右の伝統政党は振るわず、不安定な政治が続きそうです。トランプ米政権の誕生など他の欧米諸国で起きている出来事との共通点は? また、どこが違うのでしょうか。カトリック教会とイタリア政治の関係を交えてお話できればと思っています。(福島良典)

 

第454回イタリア研究会例会が開かれました。演題名は「イタリア政治の行方」、講師は毎日新聞オピニオングループ編集委員の福島良典さんで、ヨーロッパ各地の支局長を務めた後、2012年から2017年の間はローマ支局長を務めたイタリア通です。

ご存じのようにイタリアではレンツィ首相が憲法改正を目指して国民投票を行いましたが、それが否決され3月4日に総選挙が行われました。結果は上院・下院ともに議席が中道右派連合、五つ星運動、中道左派連合によって三分割されてしまい、組閣ができない状況に陥っています。福島さんはイタリアの政治に特徴的なのは中央と地方、聖と俗といった対立軸が憲著で、それが大きな影響を与えていること、共和国の成立においてパルチザンなど左派の力が強く働き、その影響がまだ残っていることを挙げました。そして近現代史においては日本と似た点が多く、日本人としてもイタリアの今後の政治の方向には目が離せないことを強調されました。

さてこれからイタリア政治がどこに向かうのか、まずはどのような形で組閣が行われるのかに注目が集まっています。可能性のあるシナリオはいくつもあるのですが、福島さんの読みでは、「五つ星」と「同盟」の連立、「五つ星」と中道左派の連立、かつてのモンティ政権のような実務者内閣、という3つの可能性があり、中でも前の二つの可能性が高く、「五つ星」が鍵を握っていると考えられるという事です。今後の組閣のキーパーソンはマッタレッラ大統領で、彼が近々各党とのネゴシエーションを行う予定になっており、まもなく組閣が行われるかもしれないと言うことです。各党の政策を見てみると、移民政策に関してはそれほど大きな違いが無く、EUに対する態度の違いが論点となっていることから、今後のイタリアの政局がヨーロッパ情勢にも大きな影響を与える可能性があるという事でした。

講演の後には多くの質問があり、「五つ星」を単なるポピュリスト政党として良いのか、という質問に関しては、ポピュリストと呼ばれている各国の政党にも大きな幅があり、「五つ星」は世界中で起こっている反既成政党、反国民国家という大きな流れの一つであり、人気取り政策だけを主張するという意味でのポピュリスト政党と考えるべきではないということでした。福島さん、分かりやすく面白いお話をありがとうございました。(橋都浩平)