イタリアでの設計活動を通して(概要)

5月例会(455回) 

・日時:2018年5月22日 (火) 19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:渡邉 泰男氏(建築家)

略歴:1941年    東京生まれ

1966年       千葉大学工学部建築学科卒業

1966〜1970年  槙総合計画事務所勤務(東京)

1971年       イタリア政府給費留学生としてローマ大学に留学

1972〜1975年  ジャンカルロ・デ・カルロ事務所勤務(ミラノ)

1976〜1978年  東京理科大学工学部建築学科講師

1978年〜      イタリア人3人とペザロにINTERSTUDIOを共同設立

1994〜2005年  千葉大学工学部建築学科非常勤講師

1997〜2001年  「Italia in Giappone 2001」の専門委員会メンバー

1998年〜      フィレンツエのデル・ビアンコ財団の専門委員会メンバー

2006〜2013年  東北文化学園大学環境技術学科客員教授

主要作品

—在イタリア日本国大使公邸(イタリア・ローマ)

—健康科学大学(日本・河口湖)

—カトリック教会(イタリア・ウルビノ)

—在フランス日本国大使公邸改装(フランス・パリ)

—日本庭園(イタリア・トリノ)他多数

著書

—イタリアに於ける学校建築  (SD)

—イタリアに住み、創造する(Edizione De Luca)

—線を通しての日本建築の特質(Longo Editore)他多数

受賞歴

−1990 INARCH賞(INARCH= INSTITUTO NAZIONALE DI ARCHITETTURA)

—ペザロスポーツセンターに対するイタリア鉄鋼協会賞

・演題:イタリアでの設計活動を通して(Attraverso l’attività professionale in Italia)

 

概要:設計活動の中心舞台をイタリアに移してから、この半世紀の間、イタリアを含め多くの国で、種々のタイプの建築の設計に携わってきました。今まで手がけた数多くの作品の中から、それぞれに設計条件の異なる4つの代表的作品を選び、それらが建つ場所の歴史的背景、文脈、環境などを考慮しながら、その設計と建設のプロセスがどのように展開していったかをエピソードなども交えながらお話できればと思っています。 (渡邉)

 

イタリア研究会第455回例会が開かれました。

講師は50年以上にわたってイタリアで設計活動を行っておられる建築家の渡邊康男さん、演題名は「イタリアでの設計活動を通して」でした。

渡邊さんは千葉大学卒業後に槇文彦事務所に勤めましたが、広場や都市と有機的に結合しているイタリアの建築に強い関心を抱き、1971年にイタリア政府給費留学生としてローマ大学に留学しました。その時に師となるジャンカルロ・デ・カルロと出会い、卒業後は彼の事務所で働くことになりました。そこでウルビーノの街における歴史的街区を保存しながらの再開発に関わったのをきっかけに、さらにイタリアの街と建築とに深く魅了され、イタリア人の友人3人と設計事務所を立ち上げ現在に至っています。

渡邊さんは自分が関わった4つのプロジェクトを示しながら、イタリアで設計を行うとはどういう事かを話してくれました。1。マルケ州ノヴィラーラの歴史的街区にある家の改修。様々な規制のある中で、住みやすく美しい家を完成。2。ローマの在イタリア日本国大使公邸。古い家を日本政府が購入し、外観を守りながら大使公邸にふさわしい内装を設計。3。ウルビーノ郊外の教会。全く新しい教会をカトリックの典礼や街の景観との調和を考えながら設計、資金不足から着工25年後も建設が進行中。4。ペーザロのスポーツセンター。スポーツだけではなく、コンサートや政治集会も開かれる巨大建造物を、ホタテ貝をモチーフとした屋根に被われた形として景観規制とのせめぎあいの中で設計。渡邊さんは、最後にイタリアでは計画よりも遅れるのは日常茶飯事だが、技術力もある。建築家は何よりも常に歴史の中で自分が置かれた立場を意識しながら設計活動を行わなければならないことを強調されました。

渡邊さん、ありがとうございました。(橋都)