アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)とルチャーノ・ファブロの作品について(概要)

8月例会(458回) 

・日時:2018年8月10日 (金) 19:00-21:00

・場所:東京文化会館 4F大会議室

・講師:駒形 克哉氏 (造形作家)

 略歴:駒形 克哉 KOMAGATA Katsuya 美術作家。1959年東京生まれ。1985年多摩美術大学芸術学科卒業、1985年伊政府給費留学生と してミラノ・ブレラ美術学院絵画科、ルチアーノ・ファブロ教室留学,1990年卒業、2005年文化 庁芸術家研修員としてローマ大学留学。切り紙細工、テンペラ画、銅版画、オブジェ、インスタレーションなど。

【主な展覧会(2000年~)】2001「エターナルホワイト」展、ローマ日本文化会館(イタリア)、2005「グローバル・プレイヤーズ」横浜BankART1929,2006「グローバル・プレイヤーズ」ルートヴィヒ・フォーラム美術館、アーヒェン、ドイツ、2008「HYPNEROTOMACHIA」なびす画廊(東京) 、「DOMANI・明日」展2008(文化庁主催)国立新美術館(東京)「TOKYO LOCAL」展 香染美術( 東京- 以後'09,10)、2012「キラリユラリヒカリ展」多摩美術大学(東京)、2014「版画天国」なびす画廊(東京)、2015 東京国際ミニプリント・トリエンナーレ2015 多摩美術大学美術館(美術館賞受賞)2016 年「80's 展- 享楽と根源」+Y Gallery(大阪)、「版画天国」なびす画廊(東京)、 2017「駒形克哉旧作展」HIGURE(東京) 2018 アートフェア「AiPHT2018」(東京/+Y Galleryより出品)

・演題:アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)とルチャーノ・ファブロの作品について

 

   概要:1967年に、イタリアで始まったアルテポーヴェラ(貧しい芸術)という芸術運動と、そのなかの代表的な一人の芸術家ルチャーノ・ファブロに焦点をあてて簡単に解説したいと思います。(駒形)

 

イタリア研究会第458回例会が開かれました。講師は2度に亘るイタリア留学体験を持つ美術作家の駒形克哉さん、演題名は「アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)とルチャーノ・ファブロの作品について」でした。

アルテ・ポーヴェラとは1967年にイタリアのジェノヴァで始まった芸術運動で、表現の複雑さを拒絶し、概念と体験とを一致させることを目指す結果として、技法は限りなく無に近づき、「もの」それ自体を提示することになります。その代表的な作家であり、駒形さんの留学先の教室の教授であったルチャーノ・ファブロが第1回のアルテ・ポーヴェラ展に提出した「作品」は、「もの」ですらなく、画廊の入口の床を磨き上げ、その部分を新聞紙でカバーするという「行為」だったそうです。別の作家ですが、画廊に生きた馬12頭を連れ込んで、観客に馬の存在をその排泄物の臭いも含めて体験させるという「作品」もあったそうです。

しかしファブロの作品もそのキャリアの中で変化を見せ、後期には自分自身の死を意識した彫刻作品や、イタリアの国土の模型を処刑されたごとく吊した作品、チェルノブイリに啓発された理性への疑問を感じさせる作品なども作成しています。しかし一貫しているのは空間に対する意識、死と生に対する感受性で、駒形さんは彼の作品には、イコンや洗礼といったカトリック信仰と繋がるものを感じると指摘していました。このアルテ・ポーヴェラは日本の美術作家たちにも大きな影響を与え、イタリアでも再評価され、最近も回顧展が行われているということです。講演後の質問では、アルテ・ポーヴェラの作家たちとルーチョ・フォンタナとの関係を問うものから、これらの作品のどこに美があるのかという率直なものまで、大いに盛り上がりました。駒形さん、ありがとうございました。(橋都)